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算定表に載っていない!高額所得者の婚姻費用

算定表に載っていない!高額所得者の婚姻費用

高額所得者の婚姻費用は、裁判所の算定表を見てもわかりません。算定表で扱われている年収(総収入)ですが、上限があります。給与所得者については2000万円、自営業者は1567万円が上限年収で、それ以降は記載がありません。そのため、上限年収を超える高額所得者の婚姻費用の計算は悩ましく、定型化しにくい個別的な事情による影響を加味して対応するほかありません。

本稿では、4つの計算方式を基に高額所得者の婚姻費用について解説します。

1.上限頭打ち方式

高額所得者についても、標準最低票の上限年収による婚姻費用を適用する考え方です。婚姻費用とは婚姻期間中の生活費を夫婦で分担するものです。この考え方では、上限年収を超える部分は、生活費ではなく資産形成に充てられていると考えるものです。

ただし、現実には上限年収を超える部分がすべて資産形成に充てられるわけではありません上限年収を基準とできるのは、上限年収を上回る部分がそれほど多額ではなく、実際の生活費も上限年収に応じた妥当な範囲に収まっている場合といえそうです。

2.基礎収入割合修正方式

この計算方法は、基礎収入割合を上限割合から若干引き下げて計算する方法です(上限割合は、給与所得者:34%、自営業:47%)。基礎収入割合が減少すると負担する婚姻費用も減少する関係にあります。

基礎収入とは、年収(総収入)から必要不可欠な出費を控除した残額部分です(可処分収入)。通常の算定表では、「必要不可欠な出費」部分を統計データに基づく割合(基礎収入割合)を用いて計算するのが一般的です。

所得が高額になるに伴い公租公課は増大し、職業費、特別経費は減少する傾向にあり、全体としては高額所得者の基礎収入割合は減少します。ただし、極めて高額な所得を得ている方の場合はこの限りではなく、基礎収入割合修正方式を用いる限度年収は1億円までが目安と指摘されています。

事例としては、給与所得7000万円の義務者の基礎収入割合として27%を用いたケース(養育費)、年収6000万円弱の医師(給与所得+雑収入)の基礎収入割合を27%としたケース(婚姻費用)があります。

3.貯蓄率控除方式

この計算方式は、基礎収入割合の計算上、通常は控除されない貯蓄率控除を行う方式です。おおまかには、年収(総収入)から税金・社会保険料を控除した金額から〇%が貯蓄に回されていると考えて、さらに控除する方法です。

高額所得者の場合は、収入から資産形成に回される割合が大きく、生活費の割合が低くなると考えられているためです。

実際の事例では、年収3900万円の義務者の基礎収入の計算上控除される貯蓄率を約7%として基礎収入を計算した事例があります。

4.算定表に頼らない計算方式

これまでの計算方法とは異なり、以前の生活水準を維持することを前提として必要な生活費を特定する方法があります。各種計算方式の修正が難しい場合はこの方法が有用です。

ただし、同居中の生活費の支出状況が認定できない(証拠が揃わない)場合や、適正な額の把握が難しい場合があり、証拠収集のために交渉や調停が長期化する可能性もあります。

5.各基準の適用

上限収入を500万円程度上回るに過ぎない場合には、「上限頭打ち方式」を適用することが合理的です。また、「基礎収入割合修正方式」と「貯蓄率控除方式」の違いはそれほどない、と言われています(前者を柔軟に適用することでほとんど同じ結果になります)。

一方で、収入が1億円を超えたり、生活状況が標準的な世帯を著しく異なるような場合には、個別的な事情を基に算定表に頼らない(頼れない)計算が必要となってきます。

6.まとめ

高額所得者の婚姻費用の問題は、個別的な解決が必要です。お一人で抱え込まずにご相談いただければ幸いです。

 

参考資料:裁判所算定表

https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html