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医師(医療法人経営)の財産分与

医師(医療法人経営)の財産分与

医師の方が依頼者・相手方の場合、問題が複雑化するケースが多いです。特に医師が経営者である場合、所得が多いだけでなく財産の種類も広範囲に渡ることが多いため、財産分与や慰謝料の話し合いが複雑化するケースが多いのです。

今回は、医師(医療法人経営)の財産分与において注意すべき点をご説明いたします。

財産分与の割合

財産分与は、夫婦が結婚している間に協力して築き上げた財産を清算するという側面(清算的財産分与)が大きく、夫婦が財産形成にどれくらい寄与したかという観点から財産分与割合を決めることになります。そして、現在では、妻が専業主婦であったか否かを問わず財産分与割合を原則として平等とする(妻に2分の1の寄与度を認める)のが一般的となっています。

しかし、あくまで妻の寄与度を「原則」2分の1と考えるだけであって、特別の事情がある場合には、その割合を変更することは否定されていません。例えば、夫が医師であり、その経営手腕によって巨額の財産を築いた場合や、夫が医師や士業等の専門資格を持って仕事をしている場合などは、妻の寄与度が4割または3割と判断されるケースもあります。

医療法人経営(持分あり)の場合

さて、原則として法人と個人は峻別して扱うのが法の原則です。そのため、個人の財産分与にあたって法人の財産は分与の対象とならない、というのが原則です。

その代わり、医療法人に出資持分があるケースでは、個人が保有する出資持分が財産分与の対象となる財産となりますので、注意が必要です。

しかし、医療法人の出資持分を現実に分割してしまうと、医療法人の経営権が分散してしまうことになり、経営上の不都合が生じてしまいます。そのため実際には、医療法人の出資持分を財産分与の基礎となる財産に加えたうえで財産分与の金額を算定し、金銭で精算する形が取られることが一般的です。また、医療法人の特有の仕組みから出資持分を換金するには制約があるという点からも支持されている考え方です。

出資持分の金銭的な評価は難しい問題ですが、法人の純資産を基に計算する方法や、将来の収益予測を基に計算をする方法があります。

なお、出資持分の換金には大きな制約があるため、出資持分の金銭評価にあたり純資産額の7割程度とする判断が示されたケースがあります。

出資持分が財産分与の対象とならないケース

出資持分が財産分与の対象にならないこともあります。財産分与の対象となるのは、あくまでも婚姻中に夫婦が協力して得た財産に限られます。そのため、婚姻前に取得した出資持分は財産分与の対象になりません。また、婚姻中に相続・贈与によって出資持分を取得した場合も財産分与の対象になりません。

そこで、「いつから事業をされているのか」、「いつ出資持分を取得したのか」がとても大事になってきます。

医療法人経営(持分なし)の場合

現在では医療法の改正により、出資持分が存在しない医療法人が増えています。

この場合、出資持分が存在しないので出資持分を財産分与の対象とすることは当然できません。そこで、法人と家計が混同していて従業員も少数と言える場合には、例外的に法人の保有財産を直接的に財産分与の対象として扱うことがあります。

別の方法として、医療法人の数年分の利益を財産分与の対象とした事例があります。この事例では医療法人の財産を財産分与の対象とすることもできましたが、親族から援助を受けた金額をすべて借入金とした場合はプラスの財産がほとんどない、として医師側が争ったために別の解決策が必要となっていました。そこで、医療法人の生み出す利益を基に財産分与の金額を決めることにしたのです。結論として、医療法人の5年分の利益に相当する金額を財産分与することになりました。

まとめ

医師の場合、離婚問題が経営問題につながることも少なくありません。財産分与によって事業が継続できなくなる可能性を考えると、医師にとっての離婚は事業の存続にも関わる一大事です。そして、離婚を請求される側からすると、離婚請求は突然です。冷静になって考えることが難しいと思いますので、弁護士へ相談されることをお勧めいたします。