日本において、離婚を希望する際の理由として最も多いと言われているのが、「性格の不一致」です。
よく使われる言葉ではある一方、そもそも「性格の不一致」とは何なのか、「性格の不一致」を理由に離婚ができるのか、ということについて、この記事ではご説明させていただきます。
「性格の不一致」とは
「性格の不一致」について、法律上の明確な定義はありません。
離婚したいと思うようになったはっきりとした出来事・きっかけはあまりないものの、これ以上一緒に生活することは難しいと感じるようになったという場合に、「性格の不一致」が理由としてあげられることが多いように思われます。
価値観や考え方のズレ、コミュニケーションの不足などがよく原因とされますが、「性格の不一致」から離婚に至る夫婦の間でよく起こる出来事としては、以下のようなものがあります。
喧嘩が多い
お互いの性格や生活習慣などの違いから、いつも喧嘩が絶えないという夫婦も珍しくありません。
まったく喧嘩がないという夫婦はそうはいないとは思いますが、あまりに喧嘩が多ければ、共同生活にも支障が出て、いずれは離婚に向かうということは十分に考えられます。
金銭感覚にズレがある
相手に無駄遣いが多かったり、あるいは借金を繰り返したりしている場合には、不満がたまるだけではなく、家計にも影響が出かねません。
たとえ今は生活費に困らなかったとしても、相手の浪費癖や借金の程度がひどい場合には、将来への不安から離婚を考えたくなるかもしれません。
金銭感覚は個人の価値観のひとつですが、家庭生活に及ぼす影響が大きいことから、そのズレが性格の不一致として離婚に向かわせる原因になることはよくあります。
相手に合わせて無理をしている
夫婦といえども他人である以上、金銭感覚以外にも、様々な考え方の違いは避けられない所です。
話し合いやコミュニケーションで解決できればよいのですが、それがうまくいかず、どちらか一方が我慢して相手に合わせてしまっている場合には、いずれ限界を迎えて離婚につながってしまうこともあります。
喧嘩が多いのも問題ですが、逆に関係を壊したくないがために不満をため込んで我慢してしまうと、心も体も疲れてしまい、最終的に離婚を考えてしまうという場合もあるでしょう。
「性格の不一致」を理由に離婚できるのか
結論から申し上げますと、性格の不一致「だけ」を理由に、離婚を拒否する相手と離婚をするのは難しいです。
離婚を拒否する相手と離婚するためには、「離婚する」という判決を裁判で出してもらう必要がありますが、裁判で強制的な離婚が認められる理由(離婚原因)として法律上定められているのは、次の5つのみです。
① 相手に不貞な行為があったとき
② 相手から悪意で遺棄されたとき(家出して生活の面倒も見ない等)
③ 相手が3年以上生死不明なとき
④ 相手が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑤ その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき。
このうち、「性格の不一致」が、①から④には当てはまらないのはすぐにお分かりかと思います。
あてはまりそうとすれば⑤ですが、性格が似ていなくても婚姻生活自体は継続することも現実にはありえます。そのため、性格の不一致それだけで、強制的に離婚させるだけの重大性のある理由があるとは、なかなか裁判所は認めてくれないのが実際のところです。
どういった場合に、「性格の不一致」で離婚できるのか
相手が離婚に同意した場合
離婚自体は、お互いが納得すれば離婚届に判を押して提出することで成立します。そしてこの場合には、上で述べたような法律上の離婚原因は必要ありません。
そのため、相手の同意があれば、「性格の不一致」を理由に離婚することは可能です。
相手の同意を得る方法としては、本人同士で話し合いを行う方法の他、弁護士を間に挟んで話し合いを行う、あるいは裁判所で委員の方に話を聴いてもらい間に入ってもらいながら話し合いを行う(離婚調停)といった方法があります。
「性格の不一致」をきっかけに、法律上の離婚原因が生じた場合
上で述べましたように、「性格の不一致」それ自体が、裁判で強制的に離婚が認められる理由(離婚原因)になることは難しいです。
もっとも、性格の不一致をきっかけに別居することになりそれが長期間に渡った場合など、夫婦関係がもはや破綻していると判断ができる場合には、上記⑤の理由があるとして離婚が認められることになります。
まとめ
この記事では、「性格の不一致」による離婚についてご説明させていただきました。
「性格の不一致」による離婚の希望はよくある一方で、法律上の定義もなく決して簡単なものではない、というのが実際のところです。
そのため、性格の不一致を理由に離婚を考えているという場合には、弁護士などの専門家にあらかじめ相談することをお勧めいたします。
ご不安の際には、お気軽にご相談下さい。